金曜日の夜9時、私は電車に乗っていた。
男に会いに。
この時間に会いに行くということは、ご飯を食べるのではなく、ドライブでもなく。
やることは一つ。
共通のつながりが私と男を結ぶ。
などと電車のなかでぼんやりと考えながら、中島美嘉のsevenをエンドレスリピートで聴く。
周りを見ると、帰りのサラリーマンや、飲み会を切り上げた若者がいる。
日常に疲れている彼らには私はどう見えるだろう。
普段着だけど、仕事から帰るようには見えない。
かと言って、友達とどこかに行った帰りにも見えないだろう。
そこはかとなく色が出てるに違いない。
sevenを聴きながら、この曲は私と違うなと思う。
sevenは倦怠期を迎えてるけど、私はまだ始まったばかり。
全然違うと思いつつ、なぜこの曲を好きなのだろう。
だって、私たちはまだ始まったばかり。
本当に?
答えは分かっている。
彼が私の方を向いていない。
電車は目的地に着く。
同じ電車に乗っているだけで、共通点のない人たち。
彼らもまた愛しい人のもとへ帰っていくのだろうか。
下を向くのは、彼らよりも帰る場所が不安定だから。
ぶっきらぼうにきびすを返す。
そんなことはない!
私は幸せ!
振り切って前を向く。
歩いていると彼が見える。
手をあげて、止めた。
見慣れている姿。