LostOnes

電車に乗り込んで、今日も仕事終わったな、やれやれと座っていたら、隣の人が新聞を広げていた。

新聞をじっと見たら、それは英字だった。

何者…?と思い、隣の人の顔を見たら、黒人男性であった。

私はいつの間にかじっと見詰めていたらしい。

彼にウインクされた。

その後、彼が私の方をチラチラと見るので、「英字新聞面白いですか?」と声をかけてしまった。

「とてもエキサイトだよ!」と彼。

何がエキサイト何だろうと思ったが、きっと三面記事みたいなのを読んでいるのだろう。

突然、彼はいきなりポテトチップスを取り出した。

「これ、僕たちの晩御飯だよ!」というようなニュアンスを英語で言う。

まあ、今袋開けたし、変なものは入ってないだろうと思い、彼も食べてるから、私も食べる。

ご飯に満足したのか彼が急に歌い出す。

『お前が勝ったけど、負け。お前が勝ったけど、でも負け』

「なんて曲?」と聞くと、「Lauryn HillのLostOnesだよ」と言った。

ソークールだねと言ったら、「だろう?CD買いに行かない?」と言われ、笑顔で「無理っす!」と断る。

彼は、「ナンパじゃないよ、一目惚れだよ」と言ってきたので、「ローリンヒルと付き合ったら」と言ったら、少し怒った顔をした。

駅に着いた時、電車から降りようとしたら、握手をせがまれた。

じゃあ、と別れた。

名前も知らないあの黒人男性は今も電車に乗って、ローリンヒル歌ってるのかな。

いや、ナンパしてるな。